2010年2月25日木曜日

鉄骨な一日

今日はパリ市内の鉄骨教会3つとラブルーストのサント・ジュヌヴィエーヴ図書館、ラロッシュジャンヌレ邸と、エッフェル塔に行ってきた。

サント・ジュヌヴィエーヴ図書館には入れず、明日に持ち越しとなったが、
あとの教会3つには入ることができた。

まずはパリで最初に作られた鉄骨造の教会。9区にある。名前は忘れた。 6分リブヴォールトの天井から落ちてくる柱が鉄になった教会。街区の角にすっぽり納まった外観。光をどのようにとっているのか気になる。バーゼルの聖アントニウス教会も街区にはまり込んだ教会で、アプスの先の壁が戸境壁となって抜けずに気持ちの悪い空白ができていた。
外観からは予想できないが、内部は鉄骨造で、三廊構成のゴシックの教会のプランのまま鉄の柱を使用したもの。しかし、ボルトの残る、異常に細い柱(Φ250)のために身廊と側廊はひとつの空間として見え、身廊側廊のヒエラルキーは限りなく小さくなっている。大きなひとつの空間に柱といすが並んでいるように見える。 側廊の上にはテラスが廻されており、その足元には鉄骨のリブがつけられ、4つ葉や先頭アーチに肉抜きされた鋳鉄が装飾として使われている。石造の外壁の柱の前に立てられた鉄骨の柱によって、屋根は支えられ、壁と屋根は構造的に独立している。
明るい堂内には、ちょうど午後の日差しがバラ窓から差し込み、細い柱の間を抜けて奥へと光が届く。緻密な幾何学と、ビビッドな色で埋め尽くされた堂内は、プラハで見たシナゴーグに良く似ていた。古典(ゴシック)の石造の教会を直接的に鉄骨造に読み替えた、古典の模倣としての鉄骨教会。

ここで、古典の模倣といっているのは、鉄という新しい素材が現れた時代に、始めは新しい素材を使って、アーチやドーム、リブなど古典、ゴシックの模倣が行われ、次第に鉄独自の細さや、ボルトを生かしたデザインなどがなされていったという考えで、今日の3教会では鉄が建築(特に教会)の中でどんな風に受容されていったのかを見ようという目論見があるからなのだ。

二つ目はSt. Augstin教会。オースマンの都市改造に伴って、サンラザール駅の西に新たなアイストップとして建てられたもので、一つ目より古く、バルタールという建築家のデザインによりパリで2番目に完成した鉄骨教会である。 この教会において鉄骨は完全に装飾の一部である。石造の柱の前に置かれた華奢な円柱は天井まで伸び、ゆるいヴォールト天井のリブとなっている。ゴシック教会でのノワイヨン様式のリブの模倣であろうか。しかし本来のリブよろしく、こちらもほとんど構造的な効果は果たしていないと思われ、むしろ細い鉄によって、曲線を多用した植物模様を作り出し、ドームやヴォールトを縁取っている。これは後のアールヌーヴォーにも近いようなデザインである。黒く光る鉄が薄暗い堂内で鈍く光っていて、非常にいい。

最後は1900年前後に建てられた鉄骨教会。これが今日の3教会で最も新しい。 一見石造りの外観だが、内部には駅舎建築のような細い鉄骨のトラスが組まれ、その上に木造の屋根が架けられ、さながら倉庫のようにも見える。細いトラスは装飾性や意味性を排除し、冷たいまでに実利のみで組まれているように見える。しかし、そんなトラスでアーチを作っている部分にはまだ捨てきれない古典の模倣を感じる。 さらに石のように見えた壁も、実はコンクリート(?もしくは石に漆喰を塗って滑らかにした?)に目地が書かれただけであり、実はこの壁そのものが古典の模倣の最たるものだろう。 鉄の特性をよく理解しているものの、窓が大きいということもなく、祈りの空間としての教会とは少しかけ離れたイメージ。

3つの教会では、徐々に鉄の鉄としての特性が発見されていったことが分かるが、それに対して教会の空間構成の変化があまり見られなかった。ラブルーストの旧国立図書館も古典の模倣としてのドームである。最初の教会のように、古典を鉄という新素材を使って模倣することで、柱が細くできるなど、新たな空間性を獲得することもできる。しかし、古典の模倣とは一線を画した、新たな素材による新たな空間性の獲得、アールヌーヴォーの出現までは、さらに数年を待たなければならなかった。 (※追記 アールヌヴォーにはガラスという素材が欠かせなかった。このガラスが近代建築の明るさを生み出した。さらに、アールヌーヴォーにおいて鉄は装飾としての使用に過ぎず、新たな空間性の獲得とまでいえるのか。むしろラブルーストのドームには古典の模倣を超えた新しさがあるようにも思える。)

今日みたいに分かりやすいテーマを立てて建築を見ていくのはいいと思う。比較もしやすいし、明日ラブルーストのサント・ジュヌヴィエーヴ図書館を見る、旧国立図書館や今日の3教会と比較できるんじゃないかな。
ちなみにパンテオン横のバロック教会も面白かった。堂内に渡されたテラスが印象に残っているが、薄暗いチャペルも良かった。協会には薄暗さが必要なのだと改めて感じた。 あとラロッシュジャンヌレ邸も。これはまたコルビュジェ特集を作るか。。
今日の一枚。やっぱり晴れた日にパリの街を歩くのは最高の贅沢だと思う。

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