そう思わせたスイス旅行から早1週間が経った。今日の昼、樋口君と小出君が帰って、今部屋で一息ついているところだ。今日は良く晴れ、夕日が眩しくて下ろしたシャッターの隙間から部屋に差し込む。久々の静かな午後。
スイス旅行を振り返ると、本当に雪と山と青い空が綺麗な国だった。
一番好きだったのは、メルクリの彫刻の家があるGiornico村。
谷間に転がる岩を集めて、壁を作り、屋根を架け、川に落ちた巨石の上に石橋を築く。住人をなくし、廃墟になった家の中には木が生え窓枠から外へ枝を広げる。雪の積もる細い道の脇には綺麗な雪解け水が羊たちのために用意されている村。
スイスといってもここはイタリア語。
山の中腹の峠には小さな教会が建ち、谷を見下ろし、時を告げる鐘の音が谷に響き渡る。谷の入り口を見ると、その先には真っ白な雪をかぶり、空の青を集めて濃縮したような岩の色をしたアルプスの山々が奥へ奥へと連なっている。山に囲まれ、時間が止まったような村。
メルクリの彫刻の家も、そんな村に廃墟のように佇む美術館(というより展示室)。佇むという表現がぴったりで、荒いコンクリートの凍りつくような内部空間を持っていた。
スイスの村は本当に良かった。
カミナダの作品が多くあるVrinもいい。
村ごとに建築と小屋のフォーマットがあって、どれも大体同じような構造、色、向きをして斜面にくっついている。そのどれもが屋根の上にたくさんの雪を載せて・・。
パリにいると山に囲まれるという感覚がない。どこを見てもなだらかな丘が広がり、どこまでも空と地面が平行のままひとつの消失点に向かって続いていく。
でも、スイスはどこも谷だ。周囲を山に囲まれ、外界と断絶された谷。何百何千という谷が集まって、そのひとつひとつがそれぞれの文化を持って、ひとつの国としてまとまっている。底知れない国だと思った。
この旅の目的は、ズントー巡り。ズントーの建物はどれもシンプルで、シンプルすぎるほどで・・、でもそのシンプルさを実現するために工夫を凝らしたディテールがある。ディテールのことは良くわからないけど、他の建物を見ていると徐々にそのすごさが分かってくる。噛めば噛むほど面白い建築というイメージ。
なかでも、ブレゲンツ美術館が良かった。青いガラスのファサードは光によって様々な表情を見せ、端のほうでは空との境目がなくなっていく。空に溶けていきそうな色をしている。
内部は天井裏に取り入れた光を、光天井にして展示室にやわらかい光を落とす。今回の展示はとにかく展示室を暗くしていて、全て閉められたブラインドの隙間から入ってくる光の筋が、曇りガラスの光天井に映って、綺麗な帯を作る。光天井とはいえ、全面を光らせるのではなく、外周の、しかもブラインドの隙間だけが光って、展示室にいいムラが出来る。この旅で他にも光天井をいくつか見たけど、ダントツでいい。ガラスとガラスも小さな金属で止められていて、その隙間から天井裏が見えそうで見えない。絶妙の隙間が残っている。
ブレゲンツは湖も良かった。美術館の目の前にある美術館は、スイス、オーストリア、ドイツの三国が湖上で交わる国境に位置する。広い湖は青く、海のような緑がかった色ではなく、どこまでも青く、群青と藍色の間のような深い深い色をしている。しかし、湖の遠くに目をやると、その青は空と交わるあたりで霞み、その境目は無くなっている。青い空と青い湖はシームレスにつながって、世界全体がぼんやりとした青い世界に覆われてしまったように見える。
あまりに気持ちが良くて、湖畔で4人でサンドイッチを食べた。最高に気持ちがいい湖と天気だった。
天気にも恵まれて気持ちいい旅行だったけど、最後はあまりの寒さでダウンした。
人間には寒さの限界があるらしい。熊本で育った俺には冬の東欧とスイスでは健康を保てないと確信した。最後の日はあやみに本当に迷惑をかけた。すまない。でも、本当に助かった。ありがとう。
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